とうだつ》したもの、それを彼はドーブレクの寝ている間に途中でうまうまと横奪《おうだつ》せんとするのだ。
宜《よ》し退却し始めた。その足音が手摺《てすり》から伝わって来る。彼はますます神経を尖らして次第に接近し来《きた》る怪敵を待ち受けた。突如、数|米突《メートル》の彼方《かなた》に敵の黒影らしいものを認めた。自分は暗い影に身をひそめているので発見される心配はない。
時は今だ! 不意にパッと飛び出したので敵も驚いて立ち止った。ルパンはサッと黒影を目がけて飛び付いた。がドシンと階段の手摺に衝突したのみで、敵は早くも下をくぐって玄関の半ばまで鼠の様に逃げた。ルパンは一生懸命|追《おい》かけた。そしてからくも庭の扉《と》の出口で捕《とら》える事が出来た。
アッと云う敵の声と同時に、扉《と》の向側《むこうがわ》からもアッと云う叫びが起った。
『ああ、畜生、どうしたんだいこりゃあ』とルパンは呟いた。その巨大なる鉄腕に掴まれたものは恐怖に戦《おのの》きふるえている小さな子供だ!
彼は子供をしっかと上衣《うわぎ》に包《くる》んで、ひしと抱きしめながら、絹半巾《きぬハンケチ》を丸めて早速の猿轡《
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