でないと誰が確言し得ようか。
解き難き問題は非常な謎として彼の前に置かれた。
『下手な真似は出来ないぞ!』と考えながら、品物をポケットに納めた。『この怪事件で、下手な真似をしたが最後、万事は休する』
ビクトワールが、ルパンの傍《そば》を通った時、
『ジャンソン中学の裏手で逢おう』と彼は低い声で囁いた。そして五分後には人通りの少ない場所で落ち合った。
『婆《ばあ》や、全体どこでこの栓を見付けたんだ』
『寝床の側の机の抽斗《ひきだし》から』
『そうか。ところで先生無いことに気がつくと、お前が盗んだと思いはしないかい』とルパンが言った。
『きっとそう思いますわ。』
『じゃ早く返してお置きよ。大急ぎで』と言いながら、ルパンは上衣《うわぎ》の懐中を探した。
『さあ、どうしたの?』とビクトワールが手を差し出した。
『さあ』としばらくしてから、彼が言った。『無いよ!』
『何ですって』
『無くなっちゃったんだ……。誰か盗んだぜ』
彼は笑い出した。何らの苦痛も無さそうに腹を抱えて笑った。ビクトワールは腹を立てて、
『笑ってるどころの騒ぎじゃないんですよ……こんな大変な事に……』
『どうだいこれは?
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