刊を見たろう? 事件《こと》がどうも面白くないんだ。ボーシュレーは書記を殺した下手人《げしゅにん》がジルベールだと云い張っている。ところが悪い事には、ボーシュレーの使った短刀はジルベールの持ってたものなんだ。それに今朝も有力な証人が出ている。何《な》にしろジルベールは利口な様でも年が若いだけに度胸が出来ていないから、ちょっとした事実を隠してみたり、曖昧な陳述をしてみたり、あるいはつまらぬ事を云い抜けようとするから、ますます不利になってしまうと、こう云う訳なんだから、乳母《ばあや》も一ツ大いに力になってくれ』…………
その夜、深更になって代議士が帰って来た。
以来数日間、ルパンはドーブレクと、生活を共にする様になった。彼がちょっとでも外出するとルパンは早速秘密捜索を行った。ルパンは彼一流の調査方法を講じた。すなわち各部屋を幾つにも区劃《くかく》し、その一ツずつについて細心な注意と整然たる順序をもって研究するのだ。のみならず、代議士の一挙手一投足から、その無意識にする動作に、表情に、あるいはまた彼の読む書籍、彼の書く手紙、あらゆるものは一ツ残らず敏感なルパンの目をもって監視した。
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