らズブリ一突きやったら、それまでじゃ……ね、飛んだハムレットとポロニャスの死が出来上がってしまう……ハムレットの文句じゃあないが「鼠じゃよ、しかも、大きな鼠じゃよ……」これ、ボロニャス殿、いやさ鼠殿、まあその穴から出て来さっしゃい』
 ルパンは今までにこんな忌々しい屈辱な目にあった事が無かった。まるで袋の鼠同様の憂目、這々《ほうぼう》の体たらくである。しかもこれに対してどうする事が出来ようか。
『顔色が少し青い様じゃ、ポロニャス殿、……オヤ、貴公はこの間中から邸の前を迂路付き廻った御隠居さんじゃな! や、ポロニャス殿、貴公はやはり警視庁の御役人じゃろう? まあまあ、落付くがよろしい。別に何ともしないよ……どうだ、クレマンス、俺の算術は確なものだろう。お前の話に依ると、ここへ入って来たものは九人だと云う。ところで俺が帰りしなに、街の遠くの方から勘定した時には連中は八人だった。九から八引く一残る。その御一方《おひとかた》はここに残って、後の様子を覗《うかが》っておるに違いなかろう。すなわち依而如件《よってくだんのごとし》さ』
『なるほど、それから?』と云ったルパンはこの男に飛びかかって一撃
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