の下に叩きのめし、グーの音も云わせぬ様にしたくてウズウズして来た。
『それから? それだけさ何もありはしないよ。隠居はこれで大切さ。さあ、今書いたこの手紙を貴公等の親方、プラスビイユ君の所へ持《もっ》て行くんだ。オイ、クレマンスや、ポロニャス殿を玄関まで御送り申上げろ。今後、この方がいらっしゃった時には、遠慮なく門を開けて、御勝手に御入りなさいと申上げろ、ポロニャス殿、さらばでござる……』
ルパンはちょっと躊躇した。こうなって来ると、何んとか見得を切らなければ花道の引込《ひっこみ》が付かない。しかしこの場の敗北は散々の体為《ていたらく》、いかんとも為様《しよう》がないので、黙って引込むにしかずと考えた。そして帽子を引掴んで頭に叩き載せ、足音も荒々敷く女中に送られて玄関を出た。
『駑畜生《どちくしょう》ッ』と門を出るや否や、ドーブレクの窓に向って叫んだ。『糞野郎! 悪党! 代議士! 貴様はよくも俺をこんな目に会わしやあがったな! ……ウヌッ、見ろ、貴様……覚えてやがれ、畜生ッ……よろしッ、野郎、この返報はきっと思い知らしてくれるから……』
彼の怒りは心頭に発した。しかしその心中に燃ゆ
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