い護謨《ごむ》を巻き付けておいたのだ。その護謨紐が切れておる』
『だって、旦那様、私は……実はあの……』
『実はあの両方へ好い子になりたいのだろう……よしよし』
と云いながら彼は五十|法《フラン》の紙幣《さつ》を握らせた。
『やって来たろう?』
『ハイ』
『春来た連中と同じか?』
『ハイ。皆で五人……それにも一人の方と……皆さんを指図なさる……』
『丈《せい》の大きい?……茶褐色《ちゃかついろ》の毛の?……』
『ハイ』
『それだけか?』
『もう一人後から入って来て皆と一緒になりました……それから、ええ、もう二人参りました。いつも邸の前で見張をしておる方々です』
『皆んなこの書斎に居たか?』
『ハイ』
『で、俺が帰ると云うので出かけたんだな?』
『ハイ』
『よろしい』
女中は引き退《さが》った。ドーブレクは再び書きかけの手紙を書いた。それから手を延ばして、彼は机の一端にあるメモの用紙へ何か書いて、すぐ眼に付く様にそれを机上に立てかけた。これは一聯の数字で、ルパンが覗いてみると、
[#4字下げ]9 − 8 = 1
ドーブレクは何か思案する様な様子で口の中《うち》で呟いていたが、
『実
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