びん》があったのを見て、一々その栓を引き抜いて調べた。
『しめしめ。いよいよきゃつも硝子の栓へやって来たわい! すると書類なんぞじゃあないかな? どうも解らなくなったぞこりゃあ……』とルパンは考えておる。
一時間半余りもプラスビイユは熱心にあらゆるものに手を付けて捜し廻ったが、一度手を触れた品物は元の通りの位置に置く事に注意していた。九時頃にドーブレクに尾行した二人の刑事が帰って来た。
『今帰って来ます!』
『徒歩か?』
『そうです』
『じゃ十分時間はあるな?』
『ございます』
プラスビイユと部下の刑事等は別段急いだ様子もなく、最後に室内をズッと見渡して、何等|気取《けど》られる様な痕跡のない事を確めた上悠々と引き上げた。ルパンの位置が困難になって来た。今出かけてはドーブレクに衝突《ぶつ》かるので家から出る訳に行かない。仕方がない。虎穴に入らずんば虎児を得ずだ。今少しここで見ていてやろう――ルパンはそう思って食堂のカアテンの影に身を潜めて、じっと書斎の方を凝視《みつ》めていた。
まもなくドーブレクが入って来た。頭はほとんど禿げていた。眼が悪いのか普通の眼鏡の上に黒眼鏡を二重にかけ
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