鉄門の側から女中が出て来て門を開いた。しばらく何か話しておる様子であったがやがてプラスビイユ及び部下の一団が門内へ入った。
『ハハア、家宅捜索だな。秘密にやるらしい。こう云う事にはぜひ我輩も立会わずばなるまいテ』
彼は何等の躊躇なく、開けたままの門内へズカズカと入った。そこには最前の女中が四辺《あたり》の様子を見張っていた。彼は待ち人でもあるかのごとく急《せ》き込んだ調子で、
『もう皆来ておるか?』
『ええ、書斎にいらっしゃいます』
彼の計画は簡単でただ立会検事の格でその現場《げんじょう》を見ていさえすればいいのだ。彼は直ちに人の居ない玄関から食堂へ入った。そこから書斎に通じておる硝子戸を通してプラスビイユ及び一味の連中の様子は手に取るごとく見える。
プラスビイユは合鍵を利用して抽斗《ひきだし》全部を開けて取調べ、続いて戸棚の中を捜し廻る。一方四名の部下の連中は本箱から図書を一冊ずつ引っ張り出して頁《ページ》を一枚二枚探り開け、はては背皮《せがわ》まで突ついて見ておる。
『ああ、馬鹿々々敷い!……何も発見《みつ》かりやせん』とプラスビイユが呶鳴《どな》った。
彼は古い酒壜《さけ
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