内に二人の警官及その他の人々は四方からドッと踏み込んで来た。
 ジルベールがたちまち高手籠手に縛《いまし》められたのでルパンも太息《といき》して起ち上った。
『いや、御手数です。大した事はなかったんですが……かなり骨を折せやあがった……私は一人を遣《や》っ付《つ》けておいてこいつを』
『だがこの家の書記は見えませんが?……殺されましたか……』と警部が慌《あわただ》しく訊ねた。
『知りません。私は人殺しと聞いてあなた方と一緒にアンジアンから来たのですがあなた方は家の左手《ゆんで》に御廻りなさったから、私は右手《めて》に廻ったのです。来てみると窓が一ツ開いておる。で私は早速その窓から中へ入ろうと思うと、二人の強盗が窓から飛び出そうとしていましたので、手早く一発撃ったのです、こいつに――』
 と云ってボーシュレーを指《ゆびさ》した。『それからこっちの奴に組付いたのです』
 この際誰れがこれを疑ぐろう? 彼は血に塗《まみ》れておる。彼は書記殺しの兇賊二名を捕《とら》えたのだ。十数名の人々は彼が兇賊と猛烈な挌闘を演じておる様を目撃した。
 しかのみならず、多数の人が泡を喰《くら》って大騒ぎに騒ぎ
前へ 次へ
全137ページ中19ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
新青年編輯局 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング