ルベールにはルパンの謀計を了解する由《よし》もなく、徒《いたずら》に亢奮して悶《もが》き騒いだ。ボーシュレーは別に何等の抵抗もせず自暴自棄の体で《てい》で、ジルベールの態度を嗤《あざわ》らって、
『ヤイヤイ。任して置きねえて事よ。愚物《どじ》……首領《かしら》をうまく落さにゃならねえんじゃねえか……よッ、こいつが第一《でえいち》だァな……』
 ふとこの時ルパンは先刻《さっき》ジルベールがボーシュレーから奪って懐中《ポケット》へねじ込んだもののある事を思い出した。そしていきなりジルベールの懐中《ポケット》へ手を突込んだ。
『アッ。不可《いけ》ねえ……こればっかりは不可《いけ》ません』と彼は身を藻掻いた。
 ルパンは再び彼を床上に叩き付けた。この時二人の警官が窓から飛び込んで来たのを見て、ジルベールも観念したか、そっとその品をルパンの手に渡した。ルパンは咄嗟の場合品物を検《あらた》めもせずそのまま懐中《ポケット》へ捩《ね》じ込んだ。ジルベールは※[#「口+耳」、第3水準1−14−94]く様に、
『首領《かしら》、この品は……いずれ話します……首領《かしら》なら確かに……』
 と云いも終らぬ
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