そっと押して戸外の様子を覗《うかが》った。外には人々が右往左往しておる物々しさ、逃走なぞ到底出来そうにもない。そこで彼は喉《のど》につまる様な大声を上げて、
『こいつだ! ……手伝ってくれッ! 曲者を捕《とら》えたぞッ!……ここだここだッ!』
 と怒鳴ると共にピストルを出して庭の木の間へ二発撃った。彼は倒れて居るボーシュレーの傍《そば》へ走って、その傷口から出る血を、自分の手や顔に塗《なす》り付け、ジルベールに手がかかるや否やいきなり物をも云わず投げ倒した。
『な、なにをするんです、首領《かしら》。酷いじゃありませんか!』
『何んでもいいから俺に任せろ』とルパンは命令口調で云った。『きっと好い様にしてやる。……お前達二人は俺が引き受けた……しかし、それにゃあ俺が自由でなけりゃならんのだ』
 人々は声する方に集まって、開け放した窓の下で騒いでおる。
『ここだッ!』と彼は再び叫んだ『ここだァ! 捕《とら》えた、早く手をかしてくれ……』
 と云うと静かに低い声で、
『気を落ち付けろ……何か云う事はないか? ……打ち合しておく事はないか?……気を落ち付けて巧くやるんだ……』
 余りに狼狽したジ
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