の出るのを見送って内へ入る時驚かされた叫声《さけびごえ》『助けてくれ……助けてくれ……殺されそうだ……』と云ったのは書記が必死になって交換局へ救いを叫んだ時だったのだ。今がやがや言っておるのは交換局からの返事だ。警官隊は時を移さず駈け付けて来た。ルパンは四五分とも経たぬ今の先、庭園の方に当って聞こえた人声を思い出した。
『警官だ……さあ出来るだけ逃れるんだ』と云って食堂を駈け出そうとする。
 しかしこの時正気付いたボーシュレーは苦しい声を絞って、
『首領《かしら》。見捨てて行くんですかい、こんなになっておる私《わっし》を……』
 身に迫る危険を捨ててルパンは立ち止った。そしてジルベールに手伝わしつつ負傷者を抱き上げた時、すでに戸外に人の迫った気配。
『失敗《しま》った!』と叫んだ。
 この時家の裏手の入口の戸を割れよとばかりに乱打する。彼等は廊下の戸口へ走った。と見る警官隊は早くも家を包囲して無二無三に突き入ろうとしている。彼はこの隙にジルベールを伴《つ》れて湖水の岸まで逃げようかと思った。しかし逃げたとしても背面《うしろ》からあびせられる敵の砲火にどうして湖水を渡れよう?とそう思うと
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