そうだ!』と云って何やら光った黒いものを引っぱった。『……さうだ!やっと解った……ハハハハこれだこれだ。すぐに気が付きそうなものだったが、馬鹿におどろかされたもんだて』
 見れば死骸の下に電話の受話器がある。そしてその紐《コード》は壁に取付けられて電話機につながっていた。ルパンは受話器を耳に押し当てた。とまもなく声が聞こえて来た。人々の呼んだり叫んだりする声――大勢の人々があわてふためいて一時《いちじ》に色々な事をがやがや怒鳴っているのであった。
『……オイ、そこに居《お》るか?……返事がないぞ……こりゃ大変だ……殺《や》られたかもしれんぞ……オイそこに居るか?……どうしたどうした?……オイ確乎《しっかり》せい……警察からも出かけたぞ……警官も……憲兵も出かけたぞ……』
『エイ、勝手にしろ』とルパンは受話器を投《ほう》り出した。
 初めルパン等が懸命に品物の運搬をしておる間に、レオナールは余り堅く縛してなかったのを幸い、その縄を解いて電話機の傍《そば》まで転がって行って、受話器を口に啣《くわ》えて床の上に下ろし、それからアンジアンの電話局へ救助を叫んだのだ。
 ルパンが最前|艇《ふね》
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