「其の下には」ト原文ニナキモ、木ト花草ノ關係ヨリ入レ候ヘドモ、必要ナキヤウニ思ハル。
(4)林盡水源ハ、邦讀ニスレバ、林盡[#(ク)][#二]水源[#(ニ)][#一]トモ、林盡[#(キテ)]水源[#(アリ)]トモ讀メ候。音讀ナラバカヽル區別ナシ、今假リニ林盡くる所、即ち水源なりトセリ。
(5)豁然開朗ハ下ノ土地平曠ト連ラナリ、狹カリシ穴ヨリ廣々トシタル所ニ出タト解スル事誤リナケレドモ、客觀的ノ景色ヲ描クト共ニ、主觀的ナル漁夫ノ心理状態ノ一變シタル事ヲ含ム。道學先生ナド、心學ノ錬成[#「錬成」に白丸傍点]ヲナスニ初メ苦心ヲナス状態ヨリ大悟ニ至ルマデノ階段ヲ示シタルモノト言フ人アリ。此レハ當ヲ得ザルモ、兩面アルモノト見、「胸すくばかり」ト譯ヲ致シタルモ、ヨリヨキ語ハ無之哉。
(6)怡然自樂ノ怡モ樂シムコトナレド、同ジ譯語ヲ用フル事能ハザレバ、少々區別シ、「怡」ノ尤近キハ調和ノ和或ハ調ナレドモ、コレヲ如何ト思ヒ、心やすらげに見ゆト譯シタリ。
(7)便ノ助辭ハ文中多ク直《タヾチ》ニノ意ヲアラハセドモ、元來、便ノ字ハ或ハ「遂《ツイ》ニ」ノ意ヲアラハス助辭ニ用ヒラルヽ事モアリ。此處ハ便要トツヾキ、
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