下げ]
かくてをのこは、こゝを出でて、かの船つき場にゆき舟をさがし、これを引きつゝ、さきに來りし路にそひ、處處にしるしをつけて郡へ歸へり、太守がりまゐりて、前に述べたる事を悉く語りしが、太守聞き、さらばとて人をこのをのこにつけ、彼の土を探らしめしが、さきにつけたりし道しるべを見失ひつ、遂に引かへしぬ。
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南陽劉子驥高尚士也。聞之欣然親往。未果。尋病終。後遂無問津者。
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南陽の(11)劉子驥といへるは世に聞えたる氣高き人物なりしが、此話を傳へきき、(めづらしき處かな、我こそ親ら往き見むと)いさみしに、未だ果たさぬうちに病を得てみまかりぬ、かくて其後にかの船着場を問ふ人は絶えてなかりしと言傳へける、
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(1)桃花源記ハ陶淵明ガ己レノ理想境ヲ描キタルモノニテ、實ニ漁夫其地ヘ至リシ事アル譯ニ非ズトイフモノアリ。眞カ實カ、明白ナラネドモ、太元中ト漠然ト述ベシ所ニ一種ノ味アリ、故ニ「太元の頃かとよ」ト譯セリ。
(2)「逢フ」ハ思ハズ出逢ヒタル事ナレバ、「ふと見れば」ト譯セリ。
(3)
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