を焚いてしまうと地べたに坐り込み、何か待つような様子で、待つと言っても自分が説明が出来ないのでぼんやりしていると、そよ風が彼女の遅れ毛を吹き散らし、去年にまさる多くの白髪《しらが》を見せた。
 小路《こみち》の上にまた一人、女が来た。これも半白《はんぱく》の頭で襤褸《ぼろ》の著物の下に襤褸の裙《はかま》をつけ、壊れかかった朱塗《しゅぬり》の丸籠を提げて、外へ銀紙のお宝を吊し、とぼとぼと力なく歩いて来たが、ふと華大媽が坐っているのを見て、真蒼《まっさお》な顔の上に羞恥の色を現わし、しばらく躊躇していたが、思い切って道の左の墓の前へ行った。
 その墓と小栓の墓は小路《こみち》を隔てて一文字《いちもんじ》に並んでいた。華大媽は見ていると、老女は四皿のお菜《さい》と一碗の飯を並べ、立ちながらしばらく泣いて銀紙を焚いた。華大媽は「あの墓もあの人の息子だろう」と気の毒に思っていると、老女はあたりを見廻し、たちまち手脚を顫わし、よろよろと幾歩か退《しりぞ》いて眼を※[#「目+爭」、第3水準1−88−85]って※[#「りっしんべん+正」、第3水準1−84−43]《おそ》れた。その様子が傷心のあまり今に
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