いただいたから、見てもらいな」
「ああそうですか」
実際わたしはこの親爺が首斬《くびきり》役であるのを知らずにいるものか。脈を見るのをつけたりにして肉付を量り、その手柄で一分の肉の分配にあずかろうというのだ。乃公はもう恐れはしない。肉こそ食わぬが、胆魂《きもたま》はお前達よりよっぽど太いぞ。二つの拳固を差出して彼がどんな風に仕事をするか見てやろう。親爺は坐っていながら眼を閉じて、しばらくはさすってみたり、またぽかんと眺めてみたり、そうして鬼の眼玉を剥き出し
「あんまりいろんな事を考えちゃいけません。静かにしているとじきに好くなります」
フン、あんまりいろんな事を考えちゃいけません、静かにしていると肥りまさあ! 彼等は余計に食べるんだからいいようなものの乃公には何のいいことがある。じきに「好くなります」もないもんだ。この大勢の人達は人を食おうと思って陰《かげ》になり陽《ひなた》になり、小盾になるべき方法を考えて、なかなか手取早く片附けてしまわない、本当にお笑草《わらいぐさ》だ。乃公は我慢しきれなくなって大声上げて笑い出し、すこぶる愉快になった。自分はよく知っている。この笑声の中には義
前へ
次へ
全21ページ中8ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
井上 紅梅 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング