しい、私にはお前のいうことは判らない。」
 彼女は顔をそむけた時、他に一つの愉快げな傲慢な顔を見出した。彼等もまた多くの鉄片で体を包んでいた。
「今のは何ごとだね?」彼女はこのときようやく、この小さいものどもは、顔を色々に変えることができるのだということが判ったので、何か他の判るような答えを訊こうとした。
「人心、古のようでなく、康囘《こうかい》貪婪《どんらん》飽くなく、天位を窺うたがために、私共の后は自ら天罰を加えるために、郊に戦われたが、天は本当に徳を祐け、私共の軍隊は向うところ敵なく、康囘を不周の山に殺したのであります。」
「何?」彼女はまだ判らないようである。
「人心、古のようでなく……」
「よろしい、よろしい、またこれだ!」彼女は、両頬から耳元まで真紅《まっか》になったことに気づいて、急に頭を後《うしろ》に向け、他のものを捜したが、しばらくして鉄片を纏いていない丸裸で、傷痕からまだ血の流れている、それでも腰にだけは破れた布切《ぬのぎれ》を巻いているものを見出すことができた。それは今、硬直している者の腰の辺から、破れた布切を解いてきて、周章《あわ》てて自分の腰に巻きつけたばかり
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