ているばかりである。
「あーあ!」彼女はもちろん自分が作ったものとは思いつつも、この白い薯《いも》のようなものが、泥土《どろ》のなかにあったのかと思うと、非常に不思議でたまらないのである。
 しかしその不思議が、彼女を歓ばし、かつてない勇気と愉快をもって、彼女は自分の仕事を続け、呼吸は吐き出され、汗さえそれに混っている……
「オギア! オギア!」と、その小さいものが啼《な》き出した。
「おや!」彼女は吃驚《びっくり》したが、全身の毛孔《けあな》中から何か飛び出したような気がした。地上にはたちまち乳白色の雲煙が立ち罩《こ》め、彼女はようやく気を鎮めたが、その小さいものも、もう啼き已《や》めていた。
「あわ、あわ!」と、彼女を呼ぶものがある。
「まあ、可愛らしいこと」彼女はそれらを見つめ、泥のついた指を差し伸べて、そのまん丸い頬を弾いてみた。
「ウッフ、アッハハ!」彼等は笑った。これが彼女が天地の間でははじめて見た笑いであった。そこで彼女自身も、はじめて止め度なく笑った。
 彼女は、それを弄びながら、なおもそれを作っては、出来たものはみんな自分の体の周囲に置いた。だがそれらは漸次に遠くへ行
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