い、しかし俄《にわ》かにボウボウと音がし、久しくたってから、とうとう無数の焔の舌が伸び、伸びては縮みしつつ昇ってゆく、また久しくして、焔は花房となり、また火の柱となり、真赤になって、崑崙山嶺の紅焔《ぐえん》を圧倒するようになった。大風が俄に起って、火の柱は巻き上ってうなり、青や色々な石は一様に赤くなり、飴のように、裂目に流れ込んだが、それは一条の不滅の電《いなずま》のようである。
 風と火の勢《いきおい》で、彼女の頭髪は捲き込まれ、四方に乱れて囘転し、汗は滝のように奔流し、火焔は彼女の体を照らし、宇宙の間に最後の肉紅色を現わした。
 火の柱は漸次に昇り、ただ蘆灰《あしばい》の一山のみを残した。彼女は天が一面に紺碧色になるのを待って、ようやく手を押してさわってみたが、掌によほどムラがあるように感じた。
「気力を養ってから、またやろう……」と彼女は、自分に思った。
 そこで彼女は、腰をかがめて、蘆灰を掬い上げては、地上の水のなかに入れたが、蘆灰がまだ冷え切らないから、水がジュウジュウと沸き、灰水《はいみず》が彼女の全身に濺がれる、まだ大風も熄んではいないから、灰が体に打ちかけられ、彼女は灰
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