見、俯しては破れに破れた大地を見るので、心や目を欣《よろこ》ばしめるものは少しもないからである。
 蘆の山が天の裂口《さけぐち》に届いたので、彼女はここにはじめて青い石を捜すことになった。初《はじめ》には天と同じ色の真青《まっさお》な石を使おうと思っていたが、地上にはそんなに多くはないし、大きい山を使ってしまうには惜しいし、時に賑やかなところにいって、小さいのを探すこともあったが、見ているものが冷笑し、痛罵し、また取っては逃げ、ある時のごときは彼女の手に咬みつきさえするのであった。そこで彼女は、白い石をはめ、それで足らなければ、橙色のものと薄黒いものを集めて、後から出来上がるときに裂目につめ、火をつけてこれを熔接《ようせつ》して仕事を完成しようとしたが、彼女は疲れて、眼は充血し耳は鳴り、堪《こら》えきれない。
「あーあ、私は今までこんなにつまらないことはなかったわ」彼女はある山嶺に腰をかけ、両手で頭をかかえて、のぼせ上って言った。
 このとき崑崙《こんろん》山上の大火はまだ熄《や》んでいず、西の空の端《はずれ》は真赤であった。彼女は、西の方を見て、そこから火のついている一株の大きい樹を
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