六斤の頭のまん中を叩きつけたわけである。「誰がお前に口出ししろと言ったえ。この間男の小寡婦《ちびごけ》め!」と大きな声であてつけた。
ガランと一つ音がして、六斤の手の中の空碗が地の上へころげ落ち、煉瓦の角にぶつかって大きな欠け口が出来た。七斤は跳び上って欠け碗を取上げ、破片を拾って合せてみながら「畜生」と一つぼやいて六斤を叩きのめした。九斤老太は泣き倒れている六斤の手を取って引越し「代々落ち目になるばかりだ」といいつづけて一緒に歩き出した。
八一ねえさんも怒り出した。「七斤ねえさん、お前は棒を恨んで人を打つのだよ……」
趙七爺は初めから笑っていたが、八一ねえさんが「役所の旦那が御布れを出さない」と言った時から、いささか機嫌を損じて卓《テーブル》のまわりを歩き出し、この時すでに一周し完って話を引取った。「棒を恨んで人を打つ。それがなんだ。大兵が今にもここへ到著するのをお前達は知らないのか。今度おいでになるのは張大帥《ちょうたいすい》だ。張大帥はすなわち燕人《えんじん》張翼徳《ちょうよくとく》の後裔で、彼が一度丈八の蛇矛《じゃぼこ》を支えて立つと、万夫不当《ばんぷふとう》の勇がある。
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