》めてあるそうだから、子孫の中で福分のある者がそれを掘り当てるのだろうが、まだ一向出て来ない。埋《うず》めてあるところは一つの謎の中に蔵《かく》されてある。
「右へ廻れ、左へ廻れ、前へ行け、後ろへ行け、桝目《ますめ》構わず量《はか》れ金銀」
この謎について陳士成はつねづね心に掛けて推測していたが、惜しいかな、ようやく解きほごしたかと思うと、すぐにまたはぐれてしまう。一度彼はたしかに見当つけて、唐家に貸してある家の下に違いない、と睨んだが、向うへ行って掘り出す勇気はない。幾度も考えなおすうちにだんだんそうらしくなって来た。自分の部屋の中にいくつも掘り返した穴の痕《あと》は、前かた試験に落第してその都度腹を立てた挙動の跡で、のちのちそれを見ると羞《はず》かしくなって、人に合せる顔もないように思われた。
しかし今夜は鉄の光が陳士成を閉じ籠めて、あのねと勧めた。彼が愚図ついていると、正しき証明を与え、そのうえしんみりした催促が加わるので、どうしても自分の部屋の中へ眼をやらずにはいられない。
白き光! それは一本の団扇《うちわ》のようにひらひらと彼の部屋の中に閃いた。
「とうとうここにあっ
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