白光
魯迅
井上紅梅訳
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)陳士成《ちんしせい》
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)皆|神仏《かみほとけ》
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「勹<夕」、第3水準1−14−76]
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陳士成《ちんしせい》が県の試験の発表を見て、家へ帰って来た時にはもう午後であった。彼は行った時には手ッ取早く掲示板を見て、まず上段の陳字を捜した。陳字も少くはないが、皆先きを争い、遅るるを恐れるように彼の眼の中に躍《おど》り上って来た。しかしそれに繋がっているのは士成の二字ではなかった。彼は新規巻きなおしにもう一度十二枚の掲示の円図の中を一つ一つ捜し尋ねて人名を皆見尽したが、遂に陳士成の名を見出すことが出来なかった。彼はただ試験場の壁の前に突立っていた。
涼風《すずかぜ》はそよそよと彼の白髪交りの短い髪の毛を吹き散らしたが、初冬の太陽はかえって暖《あたた》かに彼を照し、日に晒された彼は眩暈を感じて、顔色は灰色に
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