兎と猫
魯迅
井上紅梅訳

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)三太太《サンタイタイ》

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)十分|哺《はぐく》む

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
   (数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「火+曼」、第4水準2−80−1]
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 わたしどもの裏庭の奥に住んでいる三太太《サンタイタイ》は、夏のうち一対の白兎を買取り、彼の子供等の玩具《おもちゃ》にした。
 この一対の白兎は乳離れがしてから余り長くはないらしく、畜生ではあるが彼等の天真爛※[#「火+曼」、第4水準2−80−1]《てんしんらんまん》を見出される。しかし真直ぐに立った小さな赤味を帯びた耳と、ぴくぴく動かす鼻と、どぎまぎした眼は、知らぬところに移って来たせいでもあろう。住みなれた家にいた時の安心さはない。こういうものは縁日へ行って自分で買えば、一つが高くとも二吊文《にちょうもん》に過ぎないが、三太太は一円払った。それはボーイをやって上店《じょうみせ》から買って来させたからだ。
 子供
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