等はもちろん大喜びで、取囲んで見る。他にSという一匹の小犬がある。馳《か》け出して来てふんふん嗅いでみて、嚔《くしゃみ》を一つして二三歩退いた。三太太は叱りつけ
「S、咬みつくと承知しないよ。よく覚えておいで」
と彼の頭を掌で叩いた。Sはあとじさりしてそれから決して咬みつこうともしない。
この一対の兎は結局裏窓に面した小庭の中に締め込まれている日が多かった。聞けば大層壁紙を破ることが好きで、またたびたび木器の脚を噛《かじ》る。この小庭の内に桑の樹が一本ある。桑の実が地に落ちると、彼等はとても喜んでそれを食い、ほうれん草をやっても食わない。烏や鵲《かささぎ》が下りて来ると、彼等は身を僂《ちぢ》めて後脚《あとあし》で地上に強く弾みを掛け、ポンと一つ跳ね上る有様は、さながら一団の雪が舞い上ったようで、烏や鵲はびっくりして逃げ出す。こんなことがたびたびあるのでその後はもう近づいて来ない。三太太の話では、烏や鵲はちょっと食物《くいもの》を横取りするくらいだから一向差支えありませんが、憎らしいのは、あの大きな黒猫ですよ。いつも低い垣根の上で執念深く見詰めています。これは用心しなければならないの
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