してなまじい自由平等の話を覚えさせたら、それこそ一生涯の苦痛だろう。わたしはアルチバセフの言葉を借りて君達に訊ねる。君達は黄金時代の出現をここらの人達に予約した。しかしここらの人達は一体何を与えられたか。
おお、造物の皮鞭が中国の脊髄の上に至らぬ時、中国はすなわちとこしえにこの一様の中国である。それ自身は決して一枝毫末《いっしごうまつ》の改変をも肯《き》き入れない。
君達の口の中には毒牙のあり得るはずがない。しかし何故《なにゆえ》に『蝮蛇《まむし》』の二大|文字《もんじ》を額の上に貼りつけて、ひたすら乞食を引張り出して打殺そうとするのか」
Nの話はますます冴えて来たが、わたしの顔色が、あまり聞きたくないようであると見るや、たちまち口を噤《つぐ》んで立上り帽子を取った。
「帰るのか」
「ウン、雨が降りそうだからな」
わたしは黙々として彼を門口に送り出した。彼は帽子をかぶって言った。
「いずれまた会おうよ。お邪魔して済まなかった。あすはいい按排に双十節でないから、我々は何もかも忘れていい」
[#地から4字上げ](一九二〇年十月)
底本:「魯迅全集」改造社
1932(昭和
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