ろで火を起した。年弱《としよわ》の者はわたしと一緒に豆を剥いた。まもなく豆は煮えた。みんなは船をやりっ放しにして真中に集まって、撮《つま》んで食った。食ってしまうとまた船を出した。道具を片附けて豆殻《まめがら》は皆河の中へ棄てた。何の痕跡も残さなかったが、雙喜は八おじさん(船の持主)の塩と薪を使ったことを心配した。あのおやじはこまかいからね、きっと嗅ぎつけて怒鳴って来るにちがいない。
 みんなそこでいろんな意見を吐いたが、結局、構うもんか、もしあいつが何とか言ったら、去年あいつが陸《おか》へ上《あが》って櫨《はぜ》の枯木を持って行ったからそれを返せと言ってやるんだ。そうして眼の前で、八の禿頭を囃してやるんだ。
「家《うち》へ帰れば大丈夫だよ。乃公が保証する」
 と雙喜は船頭《みよし》に立って叫んだ。わたしはみよしの方を見ると、前はもう平橋であった。橋の根元に人が一人立っていたがそれは母親であった。雙喜はわたしの母親に向って何か言ったが、わたしも前艙《いちのま》の方へ出た。船は平橋に来て停った。われわれはごたごた陸《おか》へ上《あが》った。母親は少し不機嫌で、十二時過ぎても帰らないからど
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