もある訳《わけ》だな。――上下二冊揃だ。寝室がまた一間あって、真鍮のベッドかな。それとも質素を旨として第一監獄工場で作った楡の木のベッドでもいいが。ベッドの下は非常に清潔だ……」
彼は自分のベッドの下に眼を呉れると、薪はもう使い切らして、縄が一本、死んだ蛇のように物憂く横たわっている。
「二十三斤半……」
彼が薪がまもなくベッドの下に行水《ゆくみず》の流れは絶えず進んで来るのを予想すると頭の中がまたガサガサになって入口へ行って門を締めようと思った。しかし両手を門に掛けると、すぐに、これは少し気短かに過ぎると感じて、出しかけた手を引込め、埃のたくさん溜った布簾《カーテン》を放下《ほか》した。こういう風だと自己を守って閉じ籠るほどの強情もなく、また門戸を開放する不安もないのだから、これこそはなはだ「中庸の道」に合するものだと思ってもみた。
「……だから主人公の書斎のドアは、とこしえに締めておくものだ」
彼は席に戻って来て腰を下した。
「用事があって相談したいなら、まずドアをノックして、許可を得てから入って来る。この方法は実際いい。たとい主人公が自分の部屋に坐して主婦が来て文芸の話をす
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