。題目はこんなに好《い》いのだが出来そうも無さそうだ。
 そこでと、特に留学生と規めることもないだろう。国内で高等教育を受けた者でもいい。彼等は大学の卒業生だ。高尚で優美で、高尚で……。男は文学者だし、女も文学者だ。あるいは文学の崇拝者でもいい。また、女は詩人で、男は詩人崇拝家、フェミニスト、あるいは……」
 堪《こら》え切れなくなって彼はふり返ってみた。すると、彼の背後の本棚の脇には已《すで》に一山の白菜置場が出現している。下層は三株、真中が二株、上が一株で、彼に向ってはなはだ大きなA字を畳み上げている。
「ああ!」
 彼は驚きの歎息を発した。それと同時に顔が熱くなって、脊骨をたくさんの針にでも刺されるように感じた。「ウウウ……」と彼は永い息を吐いて、脊骨の針を除こうと思いながら、それでも考え続けるのだった。「幸福な家庭」の部屋は広いし、それに物置もあることだろうから、白菜みたいな物はそっちの方にやっておくさ。主人公の書斎は別に一間あって、壁は一面の書棚で埋っているから、その附近にはもちろん、白菜なぞは積んで置かれはしない。書棚には支那の書物、外国の書物、例の『理想の良人《おっと》』
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