って、幸福な家庭を傷つけるものではない。で、つまりだ、最初の一碗は『竜虎闘』としておいても決して差支えない。
 そこで『竜虎闘』がテーブルの中央に置かれて、彼等は箸を著け、互いに顔を見合せてニッコとしながら
『My dear please.』
『Please you eat first, my dear.』
『Oh no! please you!』
 と来るかな。そこで彼等は同時に箸を著け、同時に一塊《いっかい》の蛇肉を抓《つま》む。――いやいや。どうも蛇肉ではグロだ。やっぱり鰻という方がいい。そんならこの『竜虎闘』は蛙と鰻で作ったものということになるので、彼等は同時に一塊の鰻を挟む。大きさは皆同じで五五の二十五と、三五の……こいつはいけない。そして、同時に口に入れる……」
 彼はそのうち我慢し切れなくなって振向いてみようかと思った。というのはたちまち背後が非常に騒々しくなり、人が二三囘往ったり来たりするのだが、それでもよく持ちこたえてざわめきの中で思いを接《つな》いでいる。
「これや少し擽《くすぐ》ったいな。こんな家庭があるだろうか。おや、おや、俺の思索はどうしてこんなに乱れるだろう
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