を見て、ようやく机に向ったが、彼の頭の中は薪駄っぽの事で一杯だった。五五の二十五と、まだ頭の中は亜剌比亜《アラビア》数字で混乱していた。彼は深く息を吸って、力強く吐き出してみた。これで頭の中から薪駄っぽと五五の二十五と、亜剌比亜《アラビア》数字の幻影を追い出そうと思ったのだ。果して、息を吐いてから気持も尠《すくな》からず軽くなった。そこでまた恍惚として思いを馳せるのであった――
「どんな御馳走だろうな。珍奇な物でも差支えない。豚のロースの葛掛や粉海老の海参《いりこ》じゃあんまり平凡だ。乃公は是非とも彼等の食い物を『竜虎闘《りゅうことう》』にしたい。しかし『竜虎闘』とは一体どんな物かね? ある人はこれは蛇と猫を用い、広東《カントン》の貴重な料理で大きな宴会でなければ使わないと言ったが、わたしはかつて江蘇《こうそ》の飯屋の献立表でこれを見たことがある。江蘇人は蛇や猫なんかは食うはずがないからたぶん、蛙と鰻のことを指したのであろう。一体、この主人公と夫人は、どこの土地の人に規《き》めたんだっけな?――そんな事は彼等には関係がない。どこの国の人であろうが蛇や猫、あるいは蛙や鰻を一杯くらい食った
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