孔乙己
魯迅
井上紅梅訳

−−
【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)魯鎮《ろちん》

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)大抵|袢天著《はんてんぎ》

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
   (数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「目+匡」、第3水準1−88−81]《まぶた》
−−

 魯鎮《ろちん》の酒場の構えは他所《よそ》と違っていずれも皆、曲尺形《かねじゃくがた》の大櫃台《おおデスク》を往来へ向けて据え、櫃台《デスク》の内側には絶えず湯を沸かしておき、燗酒がすぐでも間に合うようになっている。仕事をする人達は正午《ひる》の休みや夕方の手終《てじま》いにいちいち四文銭を出しては茶碗酒を一杯買い、櫃台《デスク》に靠《もた》れて熱燗の立飲みをする。――これは二十年前のことで、今では値段が上って一碗十文になった。――もしモウ一文出しても差支えなければ、筍の塩漬や茴香豆《ういきょうまめ》の皿盛を取ることが出来る。もし果して十何文かを足し前すれば、葷《なまぐ》さの方の皿盛りが取れるんだが、こう
次へ
全11ページ中1ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
魯迅 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング