》、山あらし、土竜の類《るい》です。月明りの下でじっと耳を澄ましているとララと響いて来ます。土竜が瓜を噛んでるんですよ。その時あなたは叉棒を攫《つか》んでそっと行って御覧なさい」
わたしはそのいわゆる土竜というものがどんなものか、その時ちっとも知らなかった。――今でも解らない――ただわけもなく、小犬のような形で非常に猛烈のように感じた。
「彼は咬《か》みついて来るだろうね」
「こちらには叉棒がありますからね。歩いて行って見つけ次第、あなたはそれを刺せばいい。こん畜生は馬鹿に利巧な奴で、あべこべにあなたの方へ馳け出して来て、跨の下から逃げてゆきます。あいつの毛皮は油のように滑《すべ》ッこい」
わたしは今までこれほど多くの珍らしいことが世の中にあろうとは知らなかった。海辺にこんな五|色《しき》の貝殻があったり、西瓜にこんな危険性があったり――わたしは今の先《さ》きまで西瓜は水菓子屋の店に売っているものとばかし思っていた。
「わたしどもの沙地の中には大潮の来る前に、たくさん跳ね魚が集《あつま》って来て、ただそれだけが跳ね廻っています。青蛙のように二つの脚があって……」
ああ閏土の胸の中
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