故郷
魯迅
井上紅梅訳
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)最中《さなか》
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)屋敷|内《うち》に
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「孛+鳥」、105−11]
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わたしは厳寒を冒して、二千余里を隔て二十余年も別れていた故郷に帰って来た。時はもう冬の最中《さなか》で故郷に近づくに従って天気は小闇《おぐら》くなり、身を切るような風が船室に吹き込んでびゅうびゅうと鳴る。苫の隙間から外を見ると、蒼黄いろい空の下にしめやかな荒村《あれむら》があちこちに横たわっていささかの活気もない。わたしはうら悲しき心の動きが抑え切れなくなった。
おお! これこそ二十年来ときどき想い出す我が故郷ではないか。
わたしの想い出す故郷はまるきり、こんなものではない。わたしの故郷はもっと佳《よ》いところが多いのだ。しかしその佳いところを記すには姿もなく言葉もないので、どうやらまずこんなものだとしておこう。そうしてわたし自
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