狂人日記
魯迅
井上紅梅訳
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)大病《たいびょう》
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)一|時《じ》
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「目+爭」、第3水準1−88−85]
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某君兄弟数人はいずれもわたしの中学時代の友達で、久しく別れているうち便りも途絶えがちになった。先頃ふと大病《たいびょう》に罹《かか》った者があると聞いて、故郷《こきょう》に帰る途中立寄ってみるとわずかに一人に会った。病気に罹ったのはその人の弟で、君がせっかく訪ねて来てくれたが、本人はもうスッカリ全快して官吏候補となり某地へ赴任したと語り、大笑いして二冊の日記を出した。これを見ると当時の病状がよくわかる。旧友諸君に献じてもいいというので、持ち帰って一読してみると、病気は迫害狂の類で、話がすこぶるこんがらがり、筋が通らず出鱈目《でたらめ》が多い。日附《ひづけ》は書いてないが墨色《すみいろ》も書体も一様で
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