じろじろ見るのだろう。乃公を恐れているらしい。乃公をやっつけようと思っているらしい。本当に恐ろしいことだ。本当に痛ましいことだ。
おお解った。これはてっきりあいつ等のお袋が教えたんだ。
三
一晩じゅう睡《ねむ》れない。何事も研究してみるとだんだん解って来る。
彼等は――知県《ちけん》に鞭打たれたことがある。紳士から張手《はりで》を食《くら》ったことがある。小役人から嚊《かかあ》を取られたことがある。また彼等の親達が金貸からとっちめられて無理死《むりじに》をさせられたことがある。その時の顔色でもきのうのようなあんな凄いことはない。
最も奇怪に感じるのは、きのう往来で逢ったあの女だ。彼女は子供をたたいてじっとわたしを見詰《みつ》めている。「叔《おじ》さん、わたしゃお前に二つ三つ咬《か》みついてやらなければ気が済まない」これにはわたしも全くおどかされてしまったが、あの牙ムキ出しの青ッ面《つら》が何だかしらんが皆笑い出した。すると陳老五《ちんろうご》がつかつか進んで来て、わたしをふんづかまえて家《うち》へ連れて行った。家《うち》の者はわたしを見ても知らん振りして書斎
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