鴨の喜劇
魯迅
井上紅梅訳
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)北京《ペキン》
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)六|絃琴《げんきん》
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「勹<夕」、第3水準1−14−76]
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ロシヤの盲目詩人エロシンコ君が、彼の六|絃琴《げんきん》を携えて北京《ペキン》に来てから余り久しいことでもなかった。彼はわたしに苦痛を訴え
「淋しいな、淋しいな、沙漠の上にある淋しさにも似て」
これは全く真実の感じだ。しかしわたしは未《いま》だかつて感得したことが無い。わたしは長くここに住んでいるから「芝蘭《しらん》の室に入れば久しうしてその香を聞かず」ただ非常に騒々しく思う。しかしわたしのいわゆる騒々しさは、彼のいわゆる淋しさかもしれない。
わたしは北京にいると、春と秋がないように感じるが、長く北京にいる人の話では、ここでは先《せん》にはこんなに暖かいことがなかった。地気が北転しているのだという。しかしわたしに
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