ヨと鳴き出したので、とても可愛らしくなって買わずにはいられなくなった。一つが八十文で、一遍に四つも買った。
 小鴨はとても可愛らしい。身体じゅうが松花《まつはな》のように黄ばんで、地面の上に置くとひょろひょろと歩き出し、互に呼び交し、いつも一所に集ってピヨピヨと鳴いている。一同は喜んで明日は鰌《どじょう》を買ってやりましょうと言った。エロシンコ君はその銭は乃公《おれ》が出すと言った。
 エロシンコ君は本を教えに出掛けたので、皆そこを離れた。仲密夫人は鴨に食わせるために冷飯を持って来たが、遠くの方でパシャパシャと水音がしたので、行ってみると、その四つの鴨が蓮の池の中で行水をつかっていた。彼等はさかとんぼを打ったり、何か食べたりしていたようであったが、彼等が陸へ上ると、池の中はすっかり濁っていて、しばらく経って澄んだのを見ると、泥の中に何本かの蓮根が剥き出しに見え、その近辺にはもう足の生えたお玉杓子が一つも見当らなかった。
「エロシンコ先生、蟇の子がなくなってしまいました」
 晩になって彼が帰って来ると、子供等の中で一番小さいのがせわしなく話した。
「おお? 蟇が?」
 仲密夫人は出て来て
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