、人間の世の中はもともとこんなもんで、時に依ると首を斬られなければならないこともあるかもしれない、と感じたらしかった。
 彼はまた見覚えのある路を見た。そこで少々変に思った。なぜお仕置に行《ゆ》かないのか。彼は自分が引廻しになって皆に見せしめられているのを知らなかった。しかし知らしめたも同然だった。彼はただ人間世界はもともと大抵こんなもんで、時に依ると引廻しになって皆に見せしめなければならないものであるかもしれない、と思ったかもしれない。
 彼は覚醒した。これはまわり道してお仕置場にゆく路だ。これはきっとずばりと首を刎《は》ねられるんだ。彼はガッカリしてあたりを見ると、まるで蟻のように人が附いて来た。そうして図らずも人ごみの中に一人の呉媽を発見した。ずいぶんしばらくだった。彼女は城内で仕事をしていたのだ。彼はたちまち非常な羞恥を感じて我れながら気が滅入ってしまった。つまりあの芝居の歌を唱《うた》う勇気がないのだ。彼の思想はさながら旋風のように、頭の中を一まわりした。「若寡婦《わかごけ》の墓参り」も立派な歌ではない。「竜虎図」の「後悔するには及ばぬ」も余りつまらな過ぎた。やっぱり「手に鉄
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