ねてみたく思った。今度は阿Qを見ても逃げ込まないで、かえって阿Qのあとを追馳《おいか》けて、袖を引止めた。
「阿Q、お前はもっと外《ほか》に絹袴を持っているだろう。え、無いって。わたしは単衣物もほしいんだよ。あるだろう」
あとではこの様なことが、端近い女部屋から終《つい》に奥深い女部屋に伝わった。鄒七嫂は嬉しさの余り彼の絹袴を趙太太《ちょうたいたい》の処へ持って行ってお目利きをねがった。趙太太はまたこれを趙太爺に告げて一時すこぶる真面目になって話をしたので、趙太爺は晩餐の卓上秀才太爺(息子)と討論した。阿Qは全くどうも少し怪しい。われわれの戸締もこれから注意しなければならんが、しかし彼の品物で、まだ買ってやっていいようなものがあるかもしれないと想った。殊に趙太太は直段《ねだん》が安くて品物がいい皮の袖無しが欲しいと思っていた時だから、遂に家族は決議して鄒七嫂にたのんで阿Qをすぐに喚んで来いと言った。かつこれがために第三の例外をひらいてこの晩特にしばらく燈《あかり》をつけることを許された。
油は残り少くなったが阿Qはまだ到著しなかった。趙家の内の者は皆待ち焦れて、欠伸をして阿Qの気紛
前へ
次へ
全80ページ中46ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
魯迅 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング