い袷を著て、腰の辺には大搭連《おおどうらん》がどっしりと重みを見せ、帯紐が下へさがって弓状《ゆみなり》の弧線《なりせん》をなしている。
未荘の仕来りとして誰でもちょっと目覚ましい人物を見出した時、侮るよりもまず敬うのである。現在これが明かに阿Qであると知りながら破れ袷の阿Qとは別々である。古人の言葉に「たとい三日の間でも別れた人に逢った時には目を見張ってその特徴を見出さなければならん」といっている。そういうわけで、ボーイも番頭も見ず知らずのそこらの人も、一種の疑いを持ちながら自然と敬いの態度を現わした。
番頭はまず合点して話しかけた。
「ほう阿Q、お前さん、帰っておいでだね」
「帰って来たよ」
「景気がいいねえ。お前さんは――にいたの……」
「城内に行っていた……」この一つのニウスは二日目に未荘じゅうに伝わった。人々はみな、現金と新しい袷を持っている阿Qの中興史を聴きたく思った。そういうわけで、酒屋の中でも茶館の中でも廟《おみや》の軒下でも、皆だんだんに探りを入れて聴き出した。その結果阿Qは新奇の畏敬を得た。
阿Qの話では、彼は挙人太爺《きょじんだんな》の家《うち》のお手伝をして
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