なかったが後になって思うと、凡《すべ》て一人の主張は、賛成を得れば前進を促し、反対を得れば奮闘を促す、ところが爰《ここ》に生人《せいじん》の中《うち》に叫んで生人の反響なく、賛成もなければ反対もないと極《きま》ってみれば、身を無際限の荒原に置くが如く手出しのしようがない。これこそどのような悲哀であろうか、わたしがそこに感じたのは寂寞である。
この寂寞は一日々々と長大して大毒蛇のように遂にわたしの霊魂に絡みついた。
そうして自ら取止めのない悲哀を持ちながらムカ腹を立てずにいた。経験は反省を引起し、自分をよく見なおした。すなわち自分は、腕を振って一度《ひとたび》叫べば応える者が雲の如く集る英雄ではないと知った。
さはいえわたしは自分の寂寞を駆除しなければならない。それは自分としてはあまりに苦しい。そこで種々《いろいろ》方法を考え、自分の霊魂《たましい》を麻酔し去り、我をして国民の中《うち》に沈入せしめ、我をして古代の方へ返らしめた。その後も更に淋しいことや更に悲しいことがいろいろあったが、みなわたしの想い出したくないことばかりで、出来るなら自分の脳髄と一緒に泥の中に埋没してしまいたい
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