れども彼が馬鈴薯《ばれいしょ》を掘る絶倫な精力と判で押したように規則正しく台所へ消えて行くことは、見る人に、彼が誰か高位の人のために食事の用意でもしているんじゃないか、そうとすれば不思議な伯爵はやはり城内にかくれているのではないかという印象を起させるのであった。そこで世人《せじん》が突込んで実際は伯爵が生きているんじゃないかと訊くとゴーは頑固に首をふってそんなはずはないという。ある朝市長と牧師が城に呼ばれた。そこで両人の者はその作男《さくおとこ》兼馬丁兼|厨夫《ちゅうふ》がたくさんの兼職の中へ今一つ葬儀屋の職を加えて、やんごとない主人を棺《ひつぎ》の中に釘づけにしておいたという事実を発見した。この奇妙な事実がその後《ご》どの程度まで取調べられたものか、またはまるで取調べられなかったものか今以てよくは解っていないようだ。何しろフランボーが二、三日前に倫敦《ロンドン》から北行《ほくこう》して来るまでというもの正式の取調べはまだ行われてなかったくらいだから、行われぬままにしかし、グレンジル伯の遺骸は(それが遺骸だとすれば)小岳《しょうきゅう》の小さな墓地に今日まで葬られてあるわけだ。師父ブラ
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