ンジール伯爵様じゃ」とブラウンが悲しげに云った。そして悄然として髑髏《どくろ》を見下ろした。それからしばし彼は黙祷するものの如くであったが、やがてフランボーの手から鋤をとって「さあこうして元の通りに土をかけねばならん」と云いながら頭葢骨《ずがいこつ》を土に深く押やった。やがて彼は小さな身体と大きな頭を地中に棒のように立っている鋤の大きな把手《ハンドル》にもたれさせた。その眼はからっぽで額には幾条《いくすじ》も襞《ひだ》がただしくならんでおった。
「そうじゃ、もしこの最後の怪異の意味さえ合点が出来るものならなあ」
 彼はこう独語《ひとりごと》をつぶやきながら、鋤頭《すきがしら》によりかかったまま、教会で祈祷をする時のように両手に額を埋《うず》めた。
 空の雲々が銀碧色《ぎんぺきいろ》にかがやき出した。小鳥等は玩具《おもちゃ》のような庭の木々の中でペチャクチャとさえずり合った。その音があまりにやかましいので、まるで木自身が掛合噺《かけあいばなし》をやっているかのようであったが、三人の人物はじっと無言の態《てい》であった。
「やれやれ、もうこれで御放免が願いたいもんだ」とフランボーがたまらな
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