が何枚かあります。察するにこれ等はこのオージルビー家に中世時代から伝わっているものと私は思う。が、妙にところどころ切り抜いてあったり、顔なぞもえらい事になっているので、これは博物館へでも廻したい代物です」
外では猛烈な嵐が城をかすめて物凄い千切雲《ちぎれぐも》を吹飛ばした。そしてこの細長い空の中に闇を投げ込んだ。その時師父ブラウンは、その小さな本を手にとって燦爛《さんらん》と光るその頁《ページ》をしらべ始めた。やがて彼は口を開いた。闇の影はまだ立迷っている。しかし彼の声はまるで生れ変って来た様な声であった。
「クレーヴンさん」と云った声は十歳も若く聞えた。「あなたはあの山上の墓を発掘すべき正式の、令状をたしかに御持ちでしょうね。善は急げだ。急げばそれだけこの恐るべき事件の底も早くたたいて見られると云うものです。もしわしがあなたであったらすぐさま出立《しゅったつ》致しますがね」
「これからすぐ、えエどうしてすぐでなければいけないんです」探偵は驚いて訊ねた。
「さあなぜというと、これはなかなか重大問題ですからじゃ、嗅煙草の散らばっている事や宝石の抜き取ってある事に対しては百の理由も想像も
前へ
次へ
全36ページ中16ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
チェスタートン ギルバート・キース の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング