なたは私に取っては意味のないその物語においてある些細な点がおわかりになるでしょう。それはもう幾年も前に始まった事でして、私がクレートやギリシャの島々の古跡にある調査をしておった時なのです。私はそれを人手を借りずにやりました。ある時はそこの住民の粗野なそして仮の補助で、してまたある時は文字通りたった一人で。私が地下道の迷路を発見したのはかような事情のもとにでした。その道は最後に立派な廃物や、こわれた飾物《かざりもの》そしてバラバラになった宝石の積み重ねに通じたのです。それはある埋《うず》もれた祭壇の廃墟であろうと思いますが、そしてその中に私は奇妙な金の十字架を見つけたのです。私はそれをひっくり返してみました。そしてその裏に古《いにしえ》のキリスト信者の標徴であった所の、魚の形を見つけました。が形や模様が普通に見出されるものとはかなり異っていました。そしてそれは私には、もっと現実的に――あたかも図案家が単にありきたりの囲《かこい》あるいは後光でないように、しかしよく見ると真の魚であるように故意にしたものであるように見えました。それはむしろ粗野な野獣の一種のようにも見えました。
「なぜ私がこ
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