ックスにおいて発見されたというミイラにされた死骸についてあんたに三度話しさせたようにわしには思われるんじゃ、そいであんたは、――非常に深切に話された。最初代数学について、それからファシストについて、それからドンの景色についてな」
「つまり」教授は答えた。「あなたは私がそれ以外のある事について話そうとしていたとお考えになったのですね、御察しの通りです」
教授はテーブル掛けを眺めて、しばしの間無言であった。それから顔を上げライオンの飛躍を思わせる迅速な衝動を以って話し出した。
「師父《しふ》さん、まあおきき下さい」と彼は言った。「あなたは今まで私が出逢った最も聡明なそしてまた最も潔白な方であると考えます」
師父ブラウンは生粋のイギリス人であった。彼は、アメリカ人風に、面と向って不意にあびせかけられた真面目な真実《ほんとう》の御世辞をいかにするかという事については普通な国民性の頼りなさの凡《すべ》てを持っていた。彼の答えは意味のないつぶやきであった。そして、強い語勢の熱心さで、話しを進めたのは教授であった。
「要点は全く簡単であるという事はおわかりでしょう。明かにそれはある牧師のである。
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