台からすべった、それから彼等の身も魂も、絶壁から振りおとされるような、奈落に落ちこむようないやな気持ちになった。スメールはす早く彼の手をひいた、がもう間にあわなかった。それから彼は頭からタラタラと血を流して、棺桶の側《そば》に人事不省にたおれた。そして古るい石の棺は何世紀もの間閉じていたように再び閉じられた。食人鬼にさかれた骨を暗示するような、割目につきささった一二の棒片《ぼうぎれ》を除いて、その大海獣は石の口をパックと噛んだ。
ダイアナ夫人は狂気の如き電光を持った眼でその破滅を眺めていた。彼の母の髪は青い薄明りの中の蒼白な顔に相対して真紅に見えた。スミスは彼の頭の辺りに犬らしい何物かを以て、彼女を眺めていた。しかしそれは彼がただわずかに了解する事が出来る彼の主人の災難を眺めるだけの表情であった。タアラントと外国人は彼等のいつもの冷淡な態度で面を硬《こわ》ばらしていた。牧師は弱ってるように思われた。師父ブラウンはたおれた人の傍にひざまずいて、その様子を吟味しようとしていた。
皆んなの驚きを外《よそ》に、ポール・ターラントは彼を助けようと前に進んで来た。
「外へ運んだ方がよろしいです
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