達の眼によく見られる輝きとかなり目立った様子をしていた。
 他の四人の姿は最初この目に立つ存在の中では影のように見えた。しかし近よって見ると彼等は相違を示した。彼等の一人は船の名簿にはポール・テ・ターラントと載ってる青年であった。彼は真にアメリカ人の模範と呼ばれても差支えのないようなアメリカ人型であった。彼はおしゃれでまた気取り屋である。富める浪費者はよくアメリカの小説にあるように柔弱な悪人を造る。ポール・ターラントは着物を着かえる他には何にもなす事がないように見えた。薄明《うすあかり》のデリケートな銀色の月のように、美くしい明るい灰色の彼の衣裳を淡色《うすいろ》やまたは豊かな影に替えて、彼は日に六度しかも着物を替えた。最もアメリカ人らしくなく彼は非常に細心に短かい巻いた髯を生やしていた。そしてまた最もおしゃれらしくなく、彼自身の型から言っても、彼は華美というよりはむしろ気むずかしいように見えた。彼の沈黙の蔭には幾分バイロン風なものがあった。
 次の二人の旅行者は自然一緒に分類された。何故《なにゆえ》なら彼等は二人共アメリカ漫遊から帰るイギリスの講師であった。一人は、あまり著名ではない
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